世の中が不可逆なのは、

田崎さんの日記Hal Tasaki's logW 1003を読んでたら
こんなことが書いてあった。

このテーマの最終目標を、あえて仰々しく書くと、

なぜ時間に向きがあるのかを、量子力学にもとづいて理解する

ことだと言える。 ただし、「時間の向き」と言っても(なんで明日のことは思い出せないのかとか、タイムマシンはできないのかとか、何故に高一の夏はたった一度きりで失った時間は決して取り戻すことはできないのかとか)いろいろあるわけで、ここでは、(おそらく)もっとも扱いやすい「平衡への接近」の問題に焦点をしぼる。つまり、
マクロな系が十分に長いあいだ孤立していれば(あるいは、熱浴と接していれば)、その状態は平衡統計力学によって記述できることを、量子力学にもとづいて示す
のが目標である。 標語的に、

量子力学だけから平衡統計力学を導く

と(太字で)言ってもいいだろう。


nucさんが量子力学について面白い発言をしていた。
量子力学 - 白のカピバラの逆極限 S.144-3

量子力学を素人に教えようと思ったら、

状態っていうものが線形空間で、それが可逆的に時間発展するんです。

の一文ですんでしまった。絶対分からんね。

補足するとしたら、状態ρについては、ρ>0 と trρ=1がいるけど、線形空間であることには間違いない。

僕が最近思うのは、

世の中ってのは本質的に不可逆で確立過程として理解されるもの

ってこと。


量子力学が今あるように線形代数を使って理解されるうちは時間の不可逆性なんて、どうつついてもでてくるわけがない。
線形代数で不可逆性を記述するとしたら、射影演算子のように情報を捨てるという人為的な演算を定義しなくてはいけない。
線形代数は現象に対して過剰な制約をつけていると思うし、難しすぎる数学なのだと思う。

なにか制約をつけたときに線形代数を再現するような大きな枠組が必要だ。
線形代数を使った量子論の理解だと
ある状態ρはユニタリ行列によって時間発展する。このとき、時間発展は一価の関数として理解される。
射影演算子はある状態ρを測定された状態に移す。測定という行為は多価だけど、現実としては一つの一価の射影が選ばれるという理解の仕方だ。


そうでなくて現象の時間発展は本質的に多価だと思うことはできないだろうか。
そういう描像を描きたいと思ったときに線形代数はうまくいかないのだ。

量子論理とかは、そういうことを論理のレベルから考えようという試みなのかもしれないが、やりすぎかんがある。
もっとシンプルな数学でボブクックのいうように幼稚園児でも理解できる説明の仕方を探すべきではないかと思う。

下に書いたことは清水明さんの受け売りなんだけど、どこにあったかなと探したら
量子測定とその問題点
にありました。