マッハの原理と相対性理論

マッハの原理は、互いの相対的な位置関係の変化のみで物理が記述できるというものだ。では、次の問題はどうであろう?

マッハの遠心力に関する問題

仮に宇宙に球Aと球Bが2つあり、これらが同じ軸上に互いに反対方向に回転しているとしたら、遠心力を感じるのはAかBのどちらだろうか?

現代の物理の言葉でいえば、これだけの条件でAとBのそれぞれの局所慣性系が決まるのかを尋ねている。

局所慣性系は計量テンソルをdiag(-1,1,1,1)にする座標系のことであり、任意の座標系での計量テンソルは、一般相対性理論におけるアインシュタイン方程式より決まる。

アインシュタイン方程式の左辺に含まれる曲率テンソルは、計量テンソル微分を含むので、計量テンソル境界条件が必要になる。つまり、計量に関する境界条件を与えることは、それぞれの局所慣性系を決める条件の1つを与えるに等しい。

右辺のエネルギー運動量テンソルをどうするかという問題は残るけど、計量に関する境界条件が足りてないので、マッハの遠心力に関する問題は、相対性理論の立場では解を与える条件が不足していることが分かる。

つまり、アインシュタイン相対性理論についていえば、マッハの「相対的な位置関係の変化のみで物理を記述する」という主張はキツすぎることがわかる。