一般相対性理論のゲージ理論的見方(4)

相対性理論変分法について書いてみようと思う。相対論的な変分法には思うところがあって、この際、あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

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こういうエントリーを書くとあやふやな理解が訂正されて勉強になる。

目標は、

重力場の方程式を出すのに、物質の運動を表すLagrangian+曲率を表すLagrangianの計量の変分をとって計算なんて方法があるけど、これには注意が必要だ。

特に、物質の運動を表すLagrangianからから計量の変分をとってエネルギー運動量テンソルを導くには、ある条件が満たされている必要がある。

僕が調べた限り、その条件について書いてあった相対論の本は、ランダウ場の理論佐藤勝彦相対性理論だけだった。

つぎに、キリングベクトルとネーターの定理について書きたい。これについてはwaldの相対論の本に言及があった。これも前から気になっていたので書いてみたい。

最後に、エネルギー運動量テンソルの保存側にについて。
特殊相対論では、
\partial_iT^{ij}=0
が成り立つが、「一般相対性理論では微分は共変微分に置き換わるべし」の原理によって、
\nabla_iT^{ij}=0
となる。

特殊相対性理論が、一般相対性理論の近似になっていることを考えれば、微分を共変微分に変えるのはreasonableだけど、もう少し、原理的なところから、
\nabla_iT^{ij}=0
を導くことができる。

これらのことは、相対性理論ゲージ理論的な見方をすると自然に分かることだ。

しかし、今日書けたのは、前回のエントリー一般相対性理論のゲージ理論的見方(1) - hiroki_fの日記の証明を書かなかったところだけ。

リーマン多様体(M,g)上には、gと両立する接続∇でT=0であるものが一意的に存在する。この接続を(M,g)のLevi-Civita接続という

証明

共変微分

Xを∂/∂x^i (i=0,1,2,3)、ξをファイバー上の点、fをM上の関数とし、共変微分∇を
\nabla_{\bf X}(f\xi)=({\bf X}f)\cdot \xi + f \cdot \nabla_{\bf X}\xi
満たすもの

と定義した。これは、共変微分\nabla: \Gamma(E) \right \Gamma(T*M \otimes E)

\nabla (f\xi)=df\cdot \xi + f \cdot \nabla\xi

と定義しても同じことである。

具体的に座標を入れてみた方が分かりやすいので、局所標構場を定義する。
局所標構場とは一次独立な切断、つまりfiberの基底のことだ。TpMだったら、ベクトル空間だから基底が存在する。Eをベクトル束とする。

とりあえず、TpMの正規直交な局所標構場を(e_0,e_1,e_2,e_3)と置く。

注:ここで正規化g(e_i,e_j)=\eta_{ij}=diag \{-1,1,1,1\}しとくのは、後で計量と接続の関係を考える為。接続だけなら、そもそも計量が与えられてないので正規化の概念がない。

一般相対性理論で言うと、局所的には慣性系が存在するという原理に値する。

さて、fiber上の任意の点(切断)は局所的には、
\xi=\xi^i e_i
と書くことができる。

今、∇をEの共変微分だとすると、\nabla e_i \in \Gamma(T*M \otimes E)は、(e_0,e_1,e_2,e_3)の一次結合で書けるから、局所的に定義された一次微分形式\omega_i^jにより、
e_i=\omega_i^j e_j
と置くことができる。

よって、\xi=\xi^i e_iについては、
\xi=(d xi^j +\omega_i^j xi^i)e_j
となる。

つまり、接続は局所的には、局所標構場(e_0,e_1,e_2,e_3)と接続一形式\omega_i^jによって決まる。

ここで重要なこと

接続の決め方を見てもらえば分かるように接続形式の表現は(正規)局所標構場の取り方によってきまる。特殊相対整理論においての(正規)局所標構場のとり方の自由度はローレンツ変換(群)の分だけある。つまり相対性理論はSO(3,1)のゲージ理論なのである。

電磁場はよく知られているようにU(1)のゲージ理論である。このときに場としては接続一形式であるベクトルポテンシャル(\phi,A^1.A^2.A^3)をとる。

これと同様に重力場としても、接続一形式である\omega_i^jを採用するのが、相対論のゲージ理論的な見方である。

相対性理論の場合は、たまたま計量テンソルgを決めると接続一形式が定まるようにできているので、計量テンソルgを伝統的な相対性理論のように場と考えていても差し支えないが、それは本質的ではない。WaldのGenral relativityは接続と計量を分けて考えてある教科書であるけど、ゲージ理論的ではない。

計量テンソルgは座標系のとり方に依存することからも4個の任意関数についての不定性が残る。
この不定性は接続が正規局所標構場のとり方に依存することを考えると自明である。

ゲージ理論は数学的な準備が沢山必要だけれど、マスターしてしまえば、物理の中にある数学的構造をシンプルに記述してくれる。

僕は個人的にはリーマン幾何学での相対性理論はやめてしまった方が良いのではないかと思っている。


さて、

リーマン多様体(M,g)上には、gと両立する接続∇でT=0であるものが一意的に存在する。この接続を(M,g)のLevi-Civita接続という

について、考えてみよう。

gと両立するとは、任意の切断(相対論の場合はたまたまΓ(E)=TM)ξ,η∈Γ(E)=TMに対して、
d(g(\xi,\eta))=g(\nabla\xi,\eta)+g(\xi,\nabla\eta)
が成り立つということであった。

この定義の気持ちは、

\nabla(g(\xi,\eta))=\nabla g(\xi,\eta)+g(\nabla\xi,\eta)+g(\xi,\nabla\eta)
とした時に、g(\xi,\eta)\in Rの接続を
\nabla(g(\xi,\eta)):=d g(\xi,\eta)
で定義し、\nabla g(\xi,\eta)=0が満たされる接続とする。つまり、
\nabla g=0
となる条件と同等である。

さて、
g(e_i,e_j)=\eta_{ij}
なので、
0=g(\nabla e_i,e_j)+g(e_i,\nabla e_j)=g(\omega^k_i e_k, e_j)+g(e_i, \omega^k_j e_k)
つまり、
0=\omega^k_i \eta_{kj}+\omega^k_j \eta_{ik}
となる。

こうして、gと両立する接続形式が決まった。

さらに捩率テンソルT=0を満たす接続について考える。

ここで\theta^i e_j=\delta_{ij}となる一形式θを考える。
計量テンソルは、
g=\eta_{ij}\theta^i \otimes \theta^j
と与えられる。
T=0は、
d\theta^i+\omega_j^i \wedge \theta^j=0
とかける。

ここで、
d\theta^i=\frac{1}{2}a^i_{jk}\theta^j \wedge \theta^k
where a^i_{jk}=-a^i_{kj}
と置いて、少し頑張って計算すると、
\omega^i_j=\gamma^i_{jk}\theta^k
where \gamma^i_{jk}=\frac{1}{2}(a^i_{jk}+a^j_{ik}-a^i_{kj})
となることが分かり、

リーマン多様体(M,g)上には、gと両立する接続∇でT=0であるものが一意的に存在する。この接続を(M,g)のLevi-Civita接続という

を示せた。

これを局所自然標構場\partial/\partial x^iとその双対標構場dx^iでも証明することができる。そのときは、計算すると
\nabla{\partial/\partial x^i}=\Gamma^i_{jk}dx^k \otimes \partial/\partial x^i
where \Gamma^i_{jk}=\frac{1}{2}g^{il}(\frac{\partial g_{lk}}{\partial x^j}+\frac{\partial g_{jl}}{\partial x^k}-\frac{\partial g_{jk}}{\partial x^l})
となり、いわゆるClistoffel記号が出てくる。