ネーターの定理

(書き途中)
6月12日、追記(そのうちにちゃんと書こう。そのうちに‥)


ここしばらく空間の対称性とは何かと考えていた。いわゆるネーターの定理だが、自分なりに理解するのに時間がかかってしまった。

数学の本には物理は書いてないし、物理の本には数学が書いてない。数学と物理を結びつけることが自分のライフワークなので、数学的に厳密に物理におけるネーターの定理を示してみたいと思う。

ここで考えるのは時空の並進対称性とローレンツ対称性の半直積群であるポアンカレ対称性についてだ。これらは大域対称性と呼ばれるものである。

大域対称性のラフスケッチは以下のようなものである。物理法則が陽に場所に依存しないなら、物質や場の相互作用は相対的な位置関係に依存していると考えて良い。大域対称性は座標変換不変性などと呼ばれることもあるが、これは誤解を招く言い方だし、実際に誤解をしている人も多いと思う。対象としている系をゴッソリと別の場所に移動させても物理法則が変わらないというのが、正しい認識の仕方ではないかと思う。例えば、時間並進対称性とは、ある時刻にある系をゴッソリ未来にタイムスリップさせても、その物理法則は変わらないというように理解するべきではないのだろうか?少なくとも座標系をずらすという言い方よりは、直感的に理解できる。これは解釈の問題で座標系を変えるといっても数学の内容は変わらない。

実際に説明をしてみる。
Mを宇宙空間(多様体)とする。M上の点をpとする。M上には場(複素関数)\phi(p):M \ni p \mapsto \phi(p) \in \bf Cが存在する。場は複素関数ベクトル(線形)空間になっている。各点pについて、実数値であるLagrangian密度L[\phi(p),\partial_\mu\phi(p)]が定まる。このときLagrangian密度は場所に陽に依らない。つまり、L[\phi(p),\partial_\mu\phi(p),p]とならない。また、Lagrangianは場について線形性を仮定しない。(L[\phi(p)]+L[\phi'(p)] \not = L[\phi(p)+\phi'(p)])

さて、物理法則が大域対象性を持つ(系を時空M上でゴッソリ移動させても物理法則が変わらない)ことは、Lagrangianが陽に場所によらず、ある移動の仕方(時空並進移動+ローレンツブースト+空間回転)に対して、値が変わらないと解釈することができる。(場の運動方程式は作用の変分をとるので、Lagrangianの全微分ぐらいの不定性は残してもかまわない。)

これを式に表すと、
L[\phi(p)]=L[\phi(gp)], \forall g \in G
ここで、Gは恒等変換に単連結なポアンカレ群で、G\times M \ni (g,p) \mapsto q=gp \in Mは群gの空間Mへの作用を表す。

ネーターの定理の肝はここにつきる。これを具体的に解けば良い。



不変部分空間
複素線形関数空間\cal Fである場\phi(p)への作用を
(D_g \phi)(q)= \phi(g^{-1}q)=\phi(p) q=gp \in M
で定義する。D_gをgの表現と言う。

このとき複素線形関数空間\cal Fの部分空間\cal F_n
\forall g \in G,  D_g \cal F_n \subset F_n
であるとき\cal F_nをG不変な部分空間と呼ぶ。

実際にポアンカレ群について考えるとこれは時空並進群Tと四元回転群Lの半直積群である。

先ず、時空並進群Tについて考える。並進群t,t' \in Tについては、tt'=t'tが成り立ち、これは可換群である。可換群の規約表現は、一次元であることが分かっているので、
(D_t \phi)(p)= c\phi(p),  c \in \bf Cは定数
となる。ここで、LagrangianがL[\phi(p)]=L[\phi(gp)], \forall g \in Gであることを思い出すと、c=1でなくてはならないので、結局、
(D_t\phi)(p)=\phi(p)
であることが言える。系を並進移動させても場が変化受けないことは経験的に理解されるので、リーゾナブルな結果であると考えられる。

次に四元回転群Lについて考える。これはSU(2,C)の群なので、リー環の表現論のウェイトの理論より、規約表現は(A,B:整数または半整数)で指定され、次元は(2A+1)(2B+1)次元であることが分かる。

更に量子論との関係より、\phi(p)は複素値をとる関数ではなく演算子となるので、
\phi(p)=<\psi(p) |\phi | \psi(p)>
の関係がある。ブラケットのノルムは保存されるので、ユニタリー作用素を用いて、
(D_t\phi)(p)=<\psi(p) | D_t\phi | \psi(p)>=<\psi(p) | U^{-1}(g)\phi U(g)| \psi(p)>
となり、群gはユニタリーな表現で表される。

コンパクトな群にはユニタリーな表現が存在することが分かっているので、ポアンカレ群はコンパクトであるゆえに、ユニタリーな表現は存在する。

並進群のユニタリー表現は、局所座標系をx^\muとした時に
U(t)=\exp(i t_\mu x^\mu)となる。


ネーターの定理
局所座標系をxで与えるとすると
p=x q=gp=x'=x+\delta x
(D_g\phi)(q)=\phi'(x')=\phi'(x+\delta x)
とする。
\begin{eqnarray}L[\phi'(x')]&=&L[\phi'(x+\delta x)]\\&=&L[\phi'(x)]+\frac{\partial}{\partial x}L[\phi'(x)]\delta x\\&=&L[\phi(x)]+\frac{\partial}{\partial \phi(x)}L[\phi(x)]\delta(\phi'(x)-\phi(x))+\frac{\partial}{\partial x}L[\phi(x)]\delta x\end{eqnarray}
となる。ここで、\frac{\partial}{\partial x}L[\phi'(x)]\delta x=\frac{\partial}{\partial x}L[\phi(x)]\delta xの関係を使った。
一方、\delta(\phi'(x)-\phi(x))=(S-\frac{\partial}{\partial  x}\phi(x))\delta x
となる。


並進対称群に対しては、
t_{\mu\nu}=\frac{\partial L}{\partial_\mu \phi(x)}\partial_\nu \phi(x)-\delta_{\mu\nu}L
ときまる。

以上より、最初述べたように
L[\phi(p)]=L[\phi(gp)], \forall g \in G
から、ネーターの定理を述べることができた。

同様にガリレイ対称性を考えると、これはノンコンパクトなので、ユニタリな表現を得ることができなく、ガリレイ群に対してLagrangianが不変であるものをつくることができない。全微分の分の不定性を利用して、場の運動方程式ガリレイ不変にすることができるが、本質的ではない。