孤独なバッタが群れるとき

昆虫学の本を読んだ。バッタが群れると運動能力の高いバッタが生まれて、食物を食い荒らす。アフリカでは切実な問題になっている。本の帯には「その者、群れると黒い悪魔と化し、破滅をもたらす。愛する者の暴走を止めるため、一人の男がアフリカに旅立った。」と書いてあり、バッタへの20年にわたる愛が伝わる迷作になっている。

著者は緑色の服に身を包みバッタの群れに飛び込んで全身を食べられたいらしい。

見ろこのガキ(子供の頃の著者)を
バッタへの思いがこんなガキすら狂わす!!
愛ゆえに人は苦しまねばならぬ!!
愛ゆえに人は悲しまねばならぬ!!
愛ゆえに・・

内容のあらすじ

サバクトビバッタは、密集したときに孤独相から群生相になる。ただ、何をもって群生相になったかとする基準が曖昧だった。著者は卵の大きさで、孤独相と群生相の区別ができることを明らかにした。さらに、バッタが群生相に至るメカニズムを明らかにした。メスバッタが触覚でオスバッタの体表にある化学物質をとらえる頻度があがると、密集を認識して群生相の卵を生む。

こうした事実の発見には膨大な実験と検証が必要だ。読んでみて面白かったのは、発見された事実もさることながら、データーを取るためにいくつもの実験を平行して行っていることだ。様々な要因が絡む生物においてどうやって主原因を突き止めるのかという手法にセンスと膨大な労力が必要とされている。

サバクトビバッタ研究ではフィールドワークをする研究者が少ないらしい。もともと研究者が少ないというのもあるが、先進国の研究者がアフリカでフィールドワークするとテロリストの標的になること原因らしい。現地の研究者は先進国での留学を終えるとデスクワークに携わり、フィールドワークする暇がないという。

構造的な問題とはいえ、学問としては危機的な状況といえる。著者はフィールドワークをするべくアフリカに飛び立った。

孤独なバッタが群れるときーサバクトビバッタの相変異と大発生