Temperley-Lieb Algebraのtraceについて。
圏論の勉強会に行ってきた。刺激的で色んな話を聞くことができた。ありがとうございます。
今日は、これを読んだ。
S. Abramsky "Temperley-Lieb algebra: From knot theory to logic and computation via quantum mechanics"
http://www.comlab.ox.ac.uk/people/samson.abramsky/tambook.pdf
このとき、2.4章のThe Traceが話題になり、絵図じゃなくて具体的に数式で書いてみてよ。みたいなことになったので、解説を書いてみる。
少し疲れているけど、気合いで書いてみようと思う。これから書くことは圏論勉強会で教わった部分が大きい。
先ずは、2.1 Temperley-Lieb algebraについて、簡単な概説。
Temperley-Lieb algebra An(τ)とは、単位元を持つ、結合的な R-linear algebraで、以下の生成子によって生成される。(要するに、線形代数で、基底が恒等演算子ととその積で張られる。)
生成元: (注、は単位元の実数倍)
関係式
1 |i − j| = 1
2
3 |i − j| > 1
4
ここでは実数だとする。これを絵図で示すと、
これが先ほどの代数関係があることを示すには、以下の図を見れば良い。
ここで○は実数だとする。
たしかに、絵図による計算は代数関係式1,2,3,4を満たすことが分かる。
ドットが3つの時の基底は、生成子をU,Wとすると、単位元とその積UW、WUを合わせて、合計5つになる。
「オッケー、ジョニー。あなたの言うことは分かったわ。でもこれって何を意味するの?行列で表現してみてよ。」
「ハニー、それはできない相談だぜ。」
「えー、なによそれ。」
Temperley-Lieb algebraが行列で表現できないのは、単位元はともかく、生成子とその結合積の弧(∩,∪)の部分が線形空間から線形空間への写像と見なせないからだ。
そういうことで、行列で表現するのはあきらめる。
最後にTraceについて考える。traceは演算子から実数への写像で、以下の性質を持つ。
形式的な議論は分かったけど、結局(∩,∪)の部分ってなんだろう。
これは、U字の端点での隣り合う入力または出力が互いに双対であることを要求していると解釈することができると思う。演算子が入出力に制限を与えるという、あまり見聞きしない演算子でおもしろいと思った。
双対というのは、量子力学ならブラとケットの組み合わせだし、回路に見立てて電流だと思えば、+とーの符号だと思えば良い。
粒子と反粒子の例えが出て、それのファインマンンダイアグラムが∩∪と同一視できると言う話題がでて、そのときは同意したけど、今考えるとそれは違うと思う。
∩や∪は単に双対を要求しているだけで、∩と∪間の相互作用までは言及していないからだ。もし、同一視するなら、∩や∪の相互作用についてのグラフが必要だと思う。
最後に、traceの計算を式で表してみる。
先ずは、左側の単位元について。
これは単純で、入力(| >)→出力(I| >)は、
1>→ | 1>, | 2>→ | 2>, | 3>→ | 3> |
となる。つまり単位元の演算子は、
I=|1><1|+|2><2|+|3><3|
となる。traceは各端点での入力の双対を取って、内積を計算したものの和となるので、
[tex:TrI=\sum_{n=1,2,3}
となる。
次に、右側の演算子Uについて、
入力は、|2>の入力が|1>の双対<1|であることを要求されるので、
1>,<1 | , | 3> |
同様に<2|の出力が<3|の双対|3>であることを要求されるので、<1|,|3>,<3|
となる。また、|3>→|1>なので、
U=|1><3|
よって、
[tex:TrU=\sum_{n=1,2,3}
ここで、<2|1><3|2>について、<2|→|3>、|2>→<1|となるので、<1|1><3|3>と書ける。左右が入れ替わっていることに注意。
となる。この計算は変則的ながら、確かに絵図の計算と一致する。
最後にについて
(|1>,<1|,|3>)→(|1>,<1|,|3>)より
となる。
うまい記法が見つからないなぁ。
すごく勉強になりました。