量子テレポーテーションにまつわる妄想 大号尊者

量子テレポーテーションというものがある。これは突き詰めるところ、量子状態(情報)をベル状態にある粒子のペアを使って他の場所にところに送ることに他ならない。

通常、情報をコピーしてもオリジナルには影響は全くない*1のだが、量子テレポーテーションを行うとオリジナルな量子状態は強力な観測の影響を受けて量子状態が壊れる。

高校生の頃、テレポーテーションを情報の伝送と考えたときに、もし、自分自身を伝送したら、送信前のオリジナルの自分はどうなるんだろうと妄想したことがあった。

自分自身を構成する原子やその周りにある電子の状態を全て把握して、それを情報としてどこかに転送する。そして、その情報を元に自分を原子レベルから再構成すれば、自分の意思とともに自分のクローンができあがる。

クローンの自分は、過去の記憶をもつので自分がクローンであることは知らない。

そして、オリジナルなほうの自分は、コピーされただけで、どこかに移動することもない。

要するに、パソコンのハードディスクの中身をどこかにそっくりコピーしたことと同じ。

しかし、これは、人間の意志がパソコンのハードディスクみたいに古典情報である場合のみに正しく、もし、人の意思が量子状態であるのならば話は変わってくる。

量子テレポーテーションではオリジナルな量子状態は壊され、その量子情報はテレポーテーションした先に送られ、再構成される。

過去の記憶を含め自分自身の意思は、転送先で再構成された自分自身に引き継がれる。

僕は、人間の意識は量子状態にあるのだと思う。もし、人間の意志がパソコンのハードディスクみたいに古典情報としてあるのならば、自分の記憶を持ったクローンは幾らでもつくれる。でも、量子状態にあるのならば、僕自身はユニークな量子状態として存在し続ける。偶然に僕自身と同じ量子状態にある固体が、天文学的な確立で存在する可能性は、数学的にはあるかもしれないけど、それって宇宙が天文学的な数の発生と終焉を繰り返しても、1回あるかないかぐらいだと思う。

仏教で、こういう話がある。

大号尊者

ある男が寝ていると、死体を食べている赤鬼が現れた。そこに青鬼が現れて横取りをしようとした。赤鬼と青鬼は激しいバトルをしたが勝負がつかなくなり、男にどちらが先に死体を所有していたかを証言させることにした。

男は、正直に赤鬼に所有権があると述べると、青鬼は怒って、男の左腕をもいだ。赤鬼がすぐさまに死体の左腕を男にくっつけた。すると青鬼は、足をもいだ。赤鬼は死体の足をつけた。今度は青鬼は頭をもいだ。赤鬼は死体の頭をつけた。そうこうするうちに男の全身は別人と入れ替わってしまった。

次の朝、男は僧にこのことを話し、自分自身が分からなくなったと言った。

僧は興味深いことだと言った。

なんか、おもしろくないですか。

まぁ、妄想です。

*1:誰かのレポートをコピーしても、オリジナルのレポートの情報がなくなるわけではない。