物理と論理

数理科学11月号(物理と論理)がおもしろいと聞いたので、池袋のジュンク堂で買う。

前半のメモ

慣性と慣性系の存在について 岡村 浩
ニュートンのバケツについて

宇宙全体の星が一定の角速度回転している場合、その一般相対論的な効果で遠心力とコリオリ力が矛盾なく導かれるかという問題です。私どもの結論は、遠心力を導くための条件とコリオリ力を導くための条件が異なるために、宇宙全体の回転については絶対性があると考えざるを得ないということでした。

興味深い。いつかまじめに考えてみたい。

平衡と非平衡の熱力学・統計力学 田崎 晴明

われわれは非平衡定常状態におけるエントロピーS(T,V,N,E)と定義し、
注:Eは電場

これも面白い。僕はエントロピーの値は確たる値を持つものではなく、系に対してどれだけの情報を得ることができるかに依存していると考えているので、非平衡定常状態を特徴できる量としてEがある場合は、それもエントロピーの値を決めるファクターになることは自然なことに思う。

Maxwellのデーモンと情報熱力学 沙川 貴大・上田 正仁

「マクロ/ミクロ」と「アクセス可能/アクセス不可能」という区別は、実質的に等価である。

散逸現象を系の情報がアクセス可能からアクセス不可能への移行とする考察はおもしろかった。熱力学や情報理論を考えるときには、系と系の外部に対して観測者がいるを仮定する。こういうことを考察するには「アクセス可能/アクセス不可能」という概念が非常に重要な気がする。

この考えかただとエントロピーは観測者の存在を仮定してこそ有効になる。そしてエントロピー増大の法則は観測者を系の外部に設定するから起こるという考え方もある。量子情報の分野にはそういう考え方をしている人が多そうな気がする。知らんけど適当なことを言った。

観測者と系を分離する捕らえ方に有効性は認めつつも、観測者の存在しない系でエントロピーが増大していく問題設定を考えることも可能で、たとえば、暖かいお湯の中に氷を落とすことを考えると、観測者はいなくてもお湯の中で氷は解けていき、エントロピーは増大する。エントロピーの定義には観測者の存在と操作の関係もあるだろうと思うが、エントロピーの増大法則については物体間の相互作用が連続的なものではなく量子論的な効果によって敷居値が存在することが効いているからではないかと思っている。