5月24日@芝浦工大(豊洲)での発表

語ろう「数理解析」にある通り、以下の発表をします。
==== 語ろう「数理解析」5月のセミナー@芝浦工大豊洲)のご案内 ======

日時 平成28年5月14日(土) 14:00〜

場所 芝浦工業大学 豊洲キャンパス 教室棟5F505号室

講演1: 14:00−15:00(目安)

講演者 新居 俊作氏(九州大学大学院数理学研究院)

講演タイトル  微分形式による熱力学入門

講演概要

 本講演は深川氏の講演を聞く準備である。
 先ずラグランジュ力学系において対称性と保存量がどのように結びついているかを解説し特にエネルギーが時間平行移動対称性に付
随する保存量であることを示す。
 次に、熱力学をラグランジュ力学系に取り込むために、微分形式で表現された熱力学について解説する。
(ラグランジュ形式と変分原理自体については既知とする。)


講演2: 15:30−

講演者 深川 宏樹氏(九州大学大学院工学研究院)

講演タイトル  散逸のある連続体の新たな変分原理

講演概要
 物理系の運動法則を与える基礎原理の一つとして、「ある(作用)汎関数に停留値を与える現象が起こる」という変分原理がある。散
逸のない質点系の運動方程式はハミルトンの原理とよばれる変分原理から導出できる。一方、散逸のある系の変分原理としてはオンサ
ーガーの変分原理があり、線形現象で記述できる系であれば運動方程式が導出できることから、ソフトマターの分野では低レイノルズ
数領域の流体で広く用いられてきた。しかしながら、オンサーガの変分原理ではナビエストークス方程式のような対流項を含む運動方
程式は導出できない。

 我々は散逸系であってもハミルトンの原理を基にして、ナビエストークス方程式を導出できることを示した。更に空間に固定された
点での物理量の変化を見るオイラー描像では、流体の運動を速度場による制御系とみなし、ハミルトンの原理を「(評価)汎関数に停留
値を与える最適制御問題」とすることで、見通しよく流体の運動方程式が導出できることを見出した。散逸系では単位時間当たりのエ
ントロピー生成は他の状態変数の時間変化で決まることから、エントロピーに関する拘束条件は履歴依存性を持つ非ホロノーム拘束条
件で与えられる。最適制御理論の観点に立てば、散逸系の運動は非ホロノーム系の制御系とみなせる。

 通常の流体力学では、運動量保存の式を導いた後に応力テンソルの具体的な式を入れて系の運動方程式を得る。例えば、ナビエ・ス
トークス方程式を得るには、応力テンソルが圧力と剪断応力から成り立ち、剪断応力が速度勾配に比例すると定める。圧力は内部エネ
ルギーに、剪断応力はエントロピーの非ホロノーム拘束条件に関係する。我々の変分原理では、応力テンソルを与える代わりに「内部
エネルギー」と「エントロピーの拘束条件」を与える。なお、これらは全く任意ではなく、系の対称性や解の存在条件から制約を受け、
エントロピーの拘束条件については、更に熱力学第二法則を満たす必要がある。

 本講演では、ハミルトンの原理と最適制御理論の説明をして、その後、非ホロノーム系である散逸系の変分原理を説明する。最後に
この変分原理を用いてナビエ・ストークス方程式を導出する。粘弾性流体、二成分流体、液晶などのより複雑な流体にも本稿で紹介し
た変分原理は適用可能であり、時間のある限りこれを説明する。


※会場へのアクセスは、下記をご確認ください:

  http://www.shibaura-it.ac.jp/access/index.html