AD DA変換 サンプリング定理

大学が始まって忙しくなってきた。

さて、信号処理で、AD DA変換というものがある。フーリエ変換をしているにすぎないのだけれど、このフーリエ変換とやらを工学系の教科書で読んでみると、あまり自分の求めている解説になっていないので、自分用に解説を書いてみようと言う気になった。

僕はフーリエ変換が何であるかを知るためには正規直交関数展開の話から始めるのが、一番簡単かつ本質的だと思っている。

フーリエ変換とは、正規直交関数展開の一種にすぎない。

任意の連続かつなめらかな関数f(x)があるとしよう。関数を無限次元ベクトル空間とみなしたい。こういう見方はヒルベルト空間とかでもおなじみだ。数学的には関数空間の濃度は実数の濃度を超えるなどと興味深いこともあるけど、ここではほっとく。

関数を正規直交関数で展開するメリットは、

「ある条件をみたす関数を線型独立な正規直交関数系の線型結合で一意に表すことができる。」

につきる。

つまり、A_1(x),A_2(x).\cdotsを正規直交関数系だとすると、任意の関数は、直交関数を用いて
f(x)=a_1 A_1(x)+a_2 A_2(x)+ \cdots
と表せ、その係数a_1,a_2.\cdotsは一意である。

ここでは、正規直交である性質はまだ用いていない。

正規直交
\int_U dx A_i(x)^* A_j(x)=\delta_{ij}
ここで、Uは積分範囲で、*は複素共役。また、i=jのとき\delta_{ij}=1,i \not=jのとき \delta_{ij}=0

関数をある関数系で展開する分には、正規直交という性質はいらないが、基底となる関数系が正規直交
であると、係数a_1,a_2.\cdotsを計算するのに便利だ。

正規直交の関係をつかって、任意の関数f(x)の係数a_1,a_2.\cdotsを求めることができる。
f(x)=a_1 A_1(x)+a_2 A_2(x)+ \cdots

\int_U dx A_i(x)^* A_j(x)=\delta_{ij}
より、
\int_U dx A_i(x)^* f(x)=a_i
が成り立つ。

フーリエ変換は、関数を正規直交系で展開する簡単な例になっている。

フーリエ変換とは、任意の関数f(x)を正規直交関数基底\frac{1}{\sqrt{2 \pi}}\exp(i\omega x)で展開することに他ならない。

\frac{1}{\sqrt{2 \pi}}\exp(i\omega x)が正規直交であることは、

\frac{1}{2 \pi}\int_\-infty^\infty dx \exp(-i\omega' x) \exp(i\omega x)=\delta(\omega'-\omega)
ここで、\delta(\omega'-\omega)は超関数。

から分る。とはいってもこれは分りにくいので、以下の関係から、正規直交であることを理解した方がいいかも。
f(x)=\frac{1}{\sqrt{2 \pi}}\int^{\infty}_{-\infty}d\omega {\cal F}(\omega)\exp(i\omega x)
{\cal F}(\omega)=\frac{1}{\sqrt{2 \pi}}\int^{\infty}_{-\infty}dx f(x)\exp(-i\omega x)

上の式は、f(x)が\exp(i\omega x)で展開していて、その係数が{\cal F}(\omega)で与えられている。下の式は、係数{\cal F}(\omega)が正規直交性の性質を使って求められていることをしめしている。

連続体の濃度を超える無限次元の関数空間を扱っているので、超関数などがでてきて話は難しくなったけど、連続体の濃度の無限次元の関数空間ならもう少し話が簡単になる。

関数空間の基底をある\omegaの整数倍nに制限したもの\exp(in\omega x)にすればよい。
これにより表せる関数空間は、周期T=\frac{2\pi}{\omega}に制限される。

このとき正規直交関係は、
\frac{1}{T}\int_{{-T}/{2}}^{{T}/{2}} dx \exp(-in'\omega x) \exp(in\omega x)=\delta(n'-n)
ここで、\delta(n'-n)は、n'=nの時に1、その他0
となる。

適当な変数変換すれば、三角級数で展開することができる。


実際の回路では適当なサンプリング周期Tsで元信号(アナログ)の電圧を記録する。そして復元の際には、記録された電圧をTs秒維持した(デジタル出力)のちに、電圧の変化する角ばった部分を除去するためにローパスフィルターに通し、元波形を再現する。


サンプリング周期Tsに限界があるので、その元信号(アナログ)の周期T=2Ts以下のものはエラーの原因になるので、予め除去する必要がある。

また、デジタルで記録された時刻Tsごとの電圧は適当に離散化されており、その時系列の記録は高々可算無限であり、それは、フーリエ係数が離散化されたフーリエ級数の空間に等しい。

また、電圧を離散化した結果、元信号の周期はTsの整数倍(2以上)に丸められる。(元波形の周期がTsの整数倍である必要はない)