振動力発電機

SFCの学生が作った会社ということで、だいぶ前にテレビに出ていたのだけど、まともだと思えないんだよね。

株式会社 音力発電
http://www.soundpower.co.jp/

テレビで見た感じだと共振を利用しているみたいだ。(振動力発電機のほう)

振動からどれだけエネルギーをとることができるかは、RLC回路の共振曲線と一致する。モデルにもよるけど、振動エネルギーの数パーセントとかじゃないのかな。

真面目に計算してやろうかと思ったけど、今日はやる気なし。

振動発電とググると音力発電の宣伝を真に受けて究極のエコと絶賛の嵐で批判が全くない。本当はめちゃくちゃくだらない発明なんだけどなぁ。橋の下に取り付けてイルミネーション点灯とかやってるけど、あれはインチキで振動発電だけで、あの電力がまかなえるわけがない。


車ののエンジンは燃料の20%のエネルギーを動力に変えていて、そのうち5%くらいが振動になり、振動エネルギーの5%が振動発電で拾えると仮定すると、

燃料→車→振動→振動発電
100%→20%→1%→0.05%




って具合になるかな?

テレビでは、橋の下に取り付けてエネルギーを回収したら、発電所がいらないとか言っていたけど、これじゃ無理だろう。

こんなのに付き合ってるJRとか建築会社とかは何を考えているんだろう?



追記

こんな模型を考えた。
fは外力、kはバネ定数、Rは摩擦定数、mは質量

この運動方程式は、
m\ddot x+ R \dot x + kx = f(t)
になる。これは、LCR回路

の回路方程式
L\ddot q+ R \dot q + {1 \over C} q = E(t)
と同じ形をしている。(q:コンデンサーに蓄えられた電荷I=\dot q)
この回路方程式をフェザー法で解くと,インピーダンスZは
Z=R+ j(\omega L -{1 \over {\omega C}})
となる。
よって、
|I|=\frac{|E|}{\sqrt{R^2+ (\omega L -{\frac{1}{\omega C})^2}}
となる。つまり、直列共振回路の共振曲線は、

となる。ここで、\omega_0={1 \over \sqrt{ L C}}
消費電力は、P=\frac{1}{2}|E||I|=\frac{1}{2}\frac{|E|^2}{\sqrt{R^2+ (\omega L -{\frac{1}{\omega C})^2}}}
となる。ここで、
I=\dot x
L=m
\frac{1}{C}=k
R=R
E=f
とすると、
P=\frac{1}{2}|f||\dot x|=\frac{1}{2}\frac{|f|^2}{\sqrt{R^2+ (\omega m -{\frac{k}{\omega })^2}}}
Pはバネの運動が摩擦によって消費するエネルギーと考えることができる。摩擦の部分を発電装置に置き換えると、振動から吸収できるエネルギーとなる。
単位時間当たりの振動のエネルギーは\frac{fv_{max}\omega}{\pi}となる。v_{max}を最大揺れ速度で、周波数依存性があるとする。fが一様なときに、単位時間に吸収できるエネルギーの総量は、
P_{all}=\int_\omega d \omega \frac{1}{2}\frac{|f|^2}{\sqrt{R^2+ (\omega m -{\frac{k}{\omega })^2}}}
となる。m=k=R=f=1とすると、Pは、

となる。特性の良い角速度が0から2ぐらいまでを積分すると
\int_0^2 d\omega P(\omega)=0.66
となる。角速度が0から2の振動の持つ総エネルギーは2なので、大体30%ぐらいのエネルギーを拾える。狭い範囲なら意外と良いかも。でも、グラフを見てもらえばわかるように、エネルギースペクトルが広く分布しているときは拾えないエネルギーの方が多いので、ほとんどのエネルギーをとりそこねる。

すると、何種類かの振動子を用意するなどの工夫をすると、10%ぐらいのエネルギーを拾えるのかもしれない。

実際に、橋の振動を考えてみる。

自動車の自重を1000kgとし、速度を60Km/h(=17m/s)とし、車のタイヤの半径を0.3mとする。橋の振動半径を0.01mとし、重力加速度を9.8m/s^2すると、橋が受け取るエネルギーは、
\frac{0.01m\times 17m/s\times 1000kg\times 9.8 m/s^2}{\pi \times 0.3m}=1769W
アコードは170馬力(=126768W)あるので、1769/126768=0.02より、1.3%のエネルギーが振動になっていることになる。

追記:2010/09/13 上式修正
ワット=一秒あたりの仕事
振動一回につき消費するエネルギー 力×距離  (1000kg\times 9.8 m/s^2) \times (0.01m \times 2)
一秒あたり何回振動するか 一秒あたりの移動距離/タイヤの円周 \frac {17m/s}  {2 \pi \times 0.3 m}

資料
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/991/991-02.pdf
によると転がり抵抗が4.2%なので、振動に1.3%は妥当なところだろう。

橋の振動が角振動数56(rad/s)=180Hzあたりに分布していると仮定して、振動発電効率を30%だとすると、531Wの電力を得ることができる。100mの橋で交通量が多い場合、2台の車が常に橋の上にあると考えられるので、1062Wの電力を得ることができる。水銀灯が120wらしいので、9個つけることができる。レインボーブリッジ(=800m)なら、72個の電力がまかなえる。

上手にやれば、意外とありなのか?

振動で捨てられているエネルギーが1.3%あるとして、そのうち拾えるのがその3割だから、0.4%ぐらいだけど、車が1tもあって、一秒間に180回も振動して、揺れ幅が2cmとすると、その振動によるエネルギーは1.3%とはいえ、1769Wにもなる。結構な量のエネルギーを地面に捨てて走ってるんだね。

まとめると、
燃料→車→振動→振動発電
100%→20%→1.3%→0.4%
126 768W→531W

理想的な状況では、最初考えてたもの(0.05%)よりは、8倍ぐらいの効率を見込めているので、もしかしたら、交通量の多いとこなら、10m置きに街灯をつけるくらいの電力はまかなえるかもしれない。

制振とあわせて考えると、それなりのものができるのかもしれない。まぁ、かなり甘く評価したので、その10分の1で0.04%あたりが、実際に可能なところなのかもね。