なぜ、相対性理論なのか。熱力学と変分原理

なぜ、相対論で考えたいのかみたいなことを聞かれHal Tasaki's logW 1006、「カッコいいから」とアホな答え方をしてしまったが、なぜカッコいいかをここで、説明してみたい。

相対性理論は、日常の感覚とはずいぶん異なる結論を出す。例えば、

ウラシマ効果:人によって経験する時間が本質的に異なること
光速:どのような慣性系からみても光速は変わらない。

これらの結論は、時間を含めた我々の世界が疑リーマン計量をもつことに由来する。

相対性理論で物理現象を考えるというのは、計量による束縛を理論に課すということに他ならない。ずいぶん不自由なことに思えるかもしれないが、条件が課せられることによって定式化が制限されるのでかえって考えやすい。

数学的にゆるされる物はこれしかないから、こういうものを考えようというふうに議論できる。物理は現象あってのものなので、現象の表現として、数学的な定式化があたえられると考えるのが通常のやり方だと思うが、あえて逆に考えるのだ。

数学的な美意識に基づく物理の構築は必ずしもうまくいくことはないが、ひとつの方法としてはありだと思う。中世の科学者は初等幾何学に美意識があり、当時の天文学にはその美意識が反映されている。惑星の数と正多面体の関連を本気で考えてみたりと、現在から見ると的外れな議論も多くされている。

相対論で物理現象を考える時には、考えている物理量がスカラーなのかベクトル量なのかもしくはテンソル、スピンなのかをはっきりさせなくてはならない。

物理量にはっきりと幾何学的な特性を持たせることができるので、それを根拠に議論をすすめることができる。

相対性理論ではエネルギーと運動量は別物であるが、相対性理論では四元運動量の時間成分と空間成分である。
共動座標系で考えると、四元運動量は時間成分しかもたないので、エネルギーだけの量である。エネルギーをスカラーとして与え、物質の運動方向との組み合わせで四元運動量を考えることもできる。僕はこの見方が好きだ。

熱力学を考えるときには、温度かエントロピーを考える必要がある。温度やエントロピーはどんな量となるのであろう?温度をどのように相対性理論で定義するべきかは議論のあるところで、まだはっきりしない。エントロピースカラーであるとするのが一般的である。

僕は共動座標系で単位質量あたりのエネルギーEをスカラー量として定義して、エントロピーsをスカラー量として定義すれば良いと単純に考えていた。そうすれば、温度T=∂E/∂sが共動座標系で決まり、それをもって好きな座標系で計算してあげれば良いと単純に考えていた。しかし、このように定義した温度が平衡状態を特徴付ける量になっているのかは精緻な議論が必要とされているのかもしれない。

さて、相対性理論での解析力学であるが、これはどうだろう。

最小作用の原理によると、作用を最小にするものが現実の運動を記述するとのことである。作用はLagrangianを与えることによって、得られる。

Lagrangianそのものはスカラーである。←正確にはLagrangian密度 追記参照

Lagrangianをどのように与えるかは、現象を再現するように手で入れるのが普通である。例えば質点の運動方程式を得たかったら、
L=(運動エネルギー)-(ポテンシャルエネルギー)
として与えるのが普通である。

Lagrangianがなぜ上の用に与えられるかは、運動方程式を再現するからとしか答えようがないのである。相対性理論ではどうであろう?運動エネルギーの項はいらなくなる。なぜなら、相対性理論では光速不変の原理があり、それによって運動エネルギーの項は、最小値を求めるさいの拘束条件として自然に取り込まれるのである。よって、
L=-(ポテンシャルエネルギー)
となる。

エネルギーを共動座標系で見たときのスカラーと定義すると大変具合がよい。

変分原理によると何かLagrangianが与えられ、それを最小にするように物理現象が決まる。非相対性理論の場合は、Lagrangianを手で入れる。相対性理論の場合は、ポテンシャルエネルギーと同一視できる。むしろ最小にする何かをエネルギー(負符号なので最大)と呼んでいると解釈することもできる。

相対性理論の光速不変による条件が、定式化を一意に定める例である。相対性理論による縛りは、物理をつくる上での良い指針になるのである。

今年は、積極的に発表をしようかと思っています。

オイラー方程式の数理: 力学と変分原理250年」@京都大
部屋:420  期間:2010-07-12〜2010-07-14
RIMS共同研究「オイラー方程式の数理:力学と変分原理250年」

7月12日 (月)
[16:00〜16:30] 深川 宏樹, 藤谷 洋平 (慶應大・基礎理工)
完全流体の変分法におけるClebsch potentialについて

完全流体の速度場をEuler描像での変分法から導くためにはClebsh potentialと言われる項を追加する必要があることが知られている。本研究ではこの項が、流跡線の初期位置と終端位置を固定する条件を変分の際に考慮することから導かれることを示した。また、対応する正準なハミルトニアン形式を、速度場を最適制御における入力と見なすことで導出した。

追記:中村氏のつぶやきより訂正
本文では曖昧にしていたことを正確に書き直す。

変分原理によると以下の作用を最小にするものが場の発展方程式を与える。
S[\phi]=\int *1 L(\phi)
ここで*1は体積要素を与える。つまり汎関数Lの値を最小にする\phiを見つけよという問題になる。\phiは(スピン、ベクトル、テンソルスカラーなど)


作用は実数値を与えるので、Rの元である。積分で定義されるので4形式。
被積分関数 Lagrangian密度Lは、四次元空間上での実数値を与えるので、スカラー関数(0形式)である。
Lagrangianは、四次元空間上での座標を(t,x,y,z)としたときにt=定数上の3次元の超平面上の積分(3形式)として
定義されるので、座標依存性がありスカラーにはならない。