期待値0の賭け事で勝つ方法

ゼロサムゲームで絶対勝てる方法があれば、こんな良いことはない。
いつのときか忘れたのだけど京都での研究会である大御所の統計物理学者が、
ゼロサムの賭け事があったらやるべきかやらないべきか?」
という問題を出した。
彼はこう答えた。
「期待値0といえども揺らいでいるので、勝ちに揺らいだらやめれば良い。だから私はその賭け事をやる」

ちょっと勝ったら勝ち逃げをしろ

賭け事で勝ってるときにやめとけばなと思うことは多々あるかとは思う。ほどほど勝ったらやめるのが良いというのは、根拠のあることなのだ。

FXの必勝法とささやかれる、
”「ちょっと勝ったら利益を確保して」を繰り返す”
は本当なのだろうか?

モデルを考えてみる。

コインを投げて表がでたら+1、裏が出たら−1というゲームを考える。
もちろん期待値は0だ。

+1になったらやめるという行動戦略をとる。

試行回数 +1にいる確率
一回目  1/2
二回目  1/2
三回目  1/2+1/8
四回目  1/2+1/8
五回目  1/2+1/8+1/16
六回目  1/2+1/8+1/16
七回目  1/2+1/8+1/16+5/128
八回目  1/2+1/8+1/16+5/128
九回目  1/2+1/8+1/16+5/128+7/256

と段々増える。これは樹形図を書いて計算した。
マイナスになっても+まで巻き返す確率が0でないので、試行回数をふやせば増やすほど+1に到達できる確率は積み上がっていく。

ここで注意するのは+1になったら絶対やめているということだ。目標に達したらすぱっとやめる。これがゼロサムゲームで勝つ方法と言えよう。
また試行回数を増やすと大負けしている可能性がでてくる。実際の賭け事では試行回数を制限して大負けする確率を無くしとくべきだろう。
この戦略は、小額の勝ちの確率をあげるかわりに、大負けするわずかな可能性を受け入れている。
小額の勝ちの確率の増加と大負けの可能性がつりあって、期待値は0のままである。

FXの必勝法とささやかれる、”「ちょっと勝ったら利益を確保して」を繰り返す”を何回もくりかえしたのなら、本来の期待値になるはずなので、ひどい負け方をする日もいつかは訪れるはずである。
「希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって、いつだったかあんた言ってたよね。今ならそれ、よく分かるよ」

勝ったら賭け金が2倍になって戻ってくる5割で勝つゲームを、
勝ってもほとんど利益がないけどだいたい勝ち、負けたら大損するゲーム
に変えてるだけ。

まじめな話はこのエントリーが良いと思う。
経済とギャンブルの”必勝法”の違いについて - カンタンな答 - 難しい問題には常に簡単な、しかし間違った答が存在する