ネータの定理について 受動的、能動的変換
一般的には、次のように説明される。
物理法則が時間によらず同じだったら、エネルギー保存、
物理法則がどの場所でも同じだったら、運動量保存、
がそれぞれ導かれる
まあ、そういうことなんだけど、物理、数学としてやるためには、言葉をもっと厳密に定義する必要がある。
状態をベクトルqであらわし、時刻tでの状態遷移をみる。
(q,t)で貼られる空間を考える。状態遷移は一つの軌道(曲線)lで表すことができる。
作用Aを軌道から実数値を与える汎関数A(l)として定義する。
変分原理が主張するのは、「実現される軌道l*は作用を極小にする A(l*)≦A(l)」といったことだ。
ネーターの定理が主張するのは、以下のことだ。
もし、とある微分同相写像Φで、作用Aを極小にするl*を移したΦ(l*)も同じく作用を極小にしたならば、
A(Φ(l*))≦A(Φ(l))
自己微分同相写像Φに対応した保存量が存在する。
以下にエネルギー保存則が導かれる対称性の場合について説明する。
時間並進を考える。これは、微分同相写像をΦを次のように定義したものだ。
Φ(q(t))=q(t)+δt(dq(t)/dt)
この時に、A(Φ(l*))が極小値を与えるものであれば、その系は時間並進対称性があるという。
そして、ネーターの定理によりエネルギーと呼ばれる量が保存されることになり、
エネルギー保存則が成立する。
q(t)は時刻tの状態推移を表す。
さて、Φ(q(t))=q(t)+δt(dq(t)/dt)だが、δtが十分に小さいときは、
Φ(q(t))=q(t+δt)となる。
Φを解釈する方法は2通りある。
1.実験をした時間をずらす。能動的変換
2.実験をした時間は同じだが、時刻の数字の取り方を変える。受動的変換
この2つを代数的に区別するものはなにもない。
あくまでもあるのは、
Φ(q(t))=q(t+δt)
という変換法則だけである。
2つの違いは幾何学的な解釈の問題である。
能動的変換は、Φが1-パラメータ変換群であるということを述べている。
受動的変換は、Φは座標変換であることを述べている。つまり、時刻tは局所座標系である。
能動的であれ、受動的であれ、こういう解釈が成り立つためには、状態とは独立に空間が与えられていると考える必要がある。相対論とかやると、物質の配位が空間を決めてしまうので、もはや能動的とか受動的とかいう解釈は無意味になる。単純に、Φ(q(t))=q(t+δt)という変換法則によって、極小値を与える軌道l*は極小値を与える軌道Φ(l*)に移るという事実のみに注目すれば良いと思う。