一般相対性理論のゲージ理論的見方(6)

続きを書くつもりはなかったのだけど、
一般相対性理論のゲージ理論的見方(5) - hiroki_fの日記
リー微分と保存則について - hiroki_fの日記
について、納得いかないという意見があったので、要点だけをまとめて書いてみようと思う。細かい計算はなし。駅のホームでぼんやり考えてたら、こういう説明なら良いかもと思いついたので書いた。

エネルギー運動量保存則は、どういう性質から導かれるのかといことについて。
1 物理法則が座標系に依存しない。
2 共変微分が計量テンソルを保存する。∇g=0
の二つに由来する。

1は単なる恒等式だ。任意の作用Sを与えれば必ず成り立つ。
エネルギー運動量保存則は、1の恒等式S(φ(x),g(x))=S(φ'(x'),g'(x'))と同値の恒等式(ネーターの恒等式)と場の発展方程式(オイラーラグランジュ方程式)から導かれる。


エネルギー運動量保存則を得る際にオイラーラグランジュ方程式を用いているので、恒等式から運動方程式を得ているわけではない。

ネーターの恒等式は、S(φ(x),g(x))=S(φ'(x'),g'(x'))をLie微分L_{X}S=0したもの。
チェーンルールを噛ませるとφの微分の項とgの微分の項ができる。

注意(Lie微分は普通は多様体M上の点を同じ多様体Mの異なる位置に移す一変数微分同相写像族に対して定義されているが、ここでは座標変換を与える一変数微分同相写像族に対してLie微分を定義している。それはLie微分と呼ぶべきでないというのであればその通りだが、一変数微分同相写像族であれば、Lie微分と同様の計算ができるのは明らかなので、ここではLie微分と呼ぶことにする。)


その際に場φの微分に関する項は、オイラーラグランジュ方程式が満たされるとすると消える。
gの微分に関する項は残る。ここで共変微分∇が計量gと保存するものとすると
エネルギー運動量保存則∇T=0を得る。Tはエネルギー運動量テンソル

この議論で共変微分∇はおまけみたいなもの。
∇のとり方はいろいろ会って、相対性理論では、計量を保存し捻率テンソルを0にするものという条件が入っている。ここでは計量を保存するという性質しか使ってない。

もし、この世界を記述する∇が計量を保存しないものだったら、運動量保存則というはなかったのかもしれない。

そもそも運動法則が座標系に依存しないという事実が我々の世界が幾何学的な対象であるということの証であり、驚くべきことなのかもしれない。