任意の多様体に大域的に座標を与えることはできるか?(できても筋悪)

追記:m−hiyamaさんがきれいにまとめてくれました。
座標ってなーに? - 檜山正幸のキマイラ飼育記

同相ではない写像(埋込みや射影)で結ばれたユークリッド・数空間の点(スカラーの組)を「座標」と呼ぶのは別にかまわないでしょう。混乱や誤解を招かないように注釈すれば、ですが。

追記終わり

微分多様体は、十分大きな数空間に埋め込めて、それを使えば大域的に座標が書けるか?

ということを考えたが、どうもそれは筋が悪いように思えてきた。

筋が悪い理由としては、

多様体より大きな次元を考えるので座標の成分が独立ではなくなる。それ故扱いにくい。
扱いにくさのわりに大域的に座標を与えるメリットが特になさそう。
同相写像から得られる位相のほうが相対位相よりも一般には強い。

特に最後が一番都合が悪い。これをなくすには、埋め込まれる多様体Mが埋め込んだ空間Nでの正則部分多様体になっている必要がある。こんな条件をつけなくちゃいけないのなら、仮に大域的な座標を書くということができても、位相空間としては条件をつけて考えなくてはいけないので一般性がなくなる。てなことで、おジャンになった。
追記:"Mがコンパクトなら正則埋め込み"

でも、考えたことをメモしておこうと思った。

微小座標変換がLie微分であることをしめすときに、大域的に座標が書けたら便利かなと思ったのが、ことの始まり。

座標:位置を一意に特定するための実数の組
多様体の定義:局所的に座標が書けるもの 例 球体

座標とはずばり数ベクトル空間R^mのことだ。
地球に座標を書こうとと思うと、局所的には平面なので、数空間R^2(平面)と同一視することが可能(局所同相)だ。しかし地球全体は数ベクトル空間R^2(平面)と同一視することはできない(同相ではない)。

まぁ、しかし座標が「位置を一意に特定するための実数の組み」であるのならば、3次元の数ベクトル空間R^3で地球面上の位置を特定してあげれば良い。地球面上の位置を表すのにつかわない実数の組、(例えば、地球内部や宇宙の位置を表す3つの数字の組)などが出てしまうが気にすることはない。それでちゃんと座標の役割(位置を一意に特定)をはたしている。

問題は、任意の多様体が上にあげたようなことが出来るか(数空間への埋め込み)ということだが、それは出来る。
ホイットニーの定理

任意のσコンパクトなm次元C^r級多様体Mに対し、2m+1次元数空間R^2m+1へのC^r級の埋め込みg:M→R^2m+1であって、像g(M)がR^2m+1の閉集合になるものが存在する(1≦r≦∞)

さて、こういうことができるので、多様体への虐待が日々なされ、それを阻止するべく活動する団体も存在する。多様体愛護協会

微分多様体の一般論を講義するのに、いやがる多様体をわざわざユークリッド空間に埋め込む必要があるでしょうか?

僕は虐待(埋め込み)を推奨していない。ただ、虐待(埋め込み)ができるという事実を述べているだけだ。

つまり

4次元の宇宙空間(多様体)は、9次元数空間の部分集合として扱えるので、9個の数字の組を用いれば、一意に4次元の宇宙空間の座標の位置を特定することは可能である。

4次元の宇宙空間を表すのに座標の成分が9個なんてムダもいいところだけど、とりあえず大域的に座標を与えることができる。

実はここで反論が多かった。「座標の成分が独立じゃないのはやだ。」ってのが主張。
それに対して、「いいじゃん別に」っていう立ち場だった。

そこまでは気持ちの問題だったと(少なくとも僕は)思っていたのだが、位相をどう扱うかと考えてたり、本を調べたりしているうちに

埋め込んだ空間Nでの、同相写像から得られる位相のほうが相対位相よりも一般には強い。

ってことに気がついて、もうどうでもいいやって気になった。チャーンの講義ノート(微分幾何学講義)p24の記述を引写しとおく。

埋め込まれた部分多様体(φ,M)に関してφは単車なので、Mの可微分構造はφ(M)上に写される。よって、φ:M→φ(M)は微分同型写像になる。一方、φ(M)はNの部分集合としてNより誘導位相が入る。写像φを通してMから導かれるφ(M)の位相は、Nから誘導される位相とは必ずしも一致しない。一般に、φを通して得られるMの位相は、Nから誘導される位相より強い

twitterでのやりとりもメモらせてもらいます。みなさまありがとうございました。

@hiroki_f
座標とは局所的に定義できるものというのが、リーマン幾何学になれた人のものの考え方だけど、広すぎない範囲では大域的に定義できる。さらに言えば、どんな微分可能多様体は、次元の高いユークリッド空間に埋め込めるので、そうすれば大域的にも座標を定義できる。

@hiroki_f
埋め込みなら、その像は同相写像なので、当然、局所同相だとおもうのですが、どうでしょう? @m_hiyama 次元の高いユークリッド空間に埋め込めるので、そうすれば大域的にも座標を定義できる。/ それは普通「座標」とは言わないよ。局所同型性がないもの。

@m_hiyama
普通(多数派では)座標とは、ユークリッド空間の開集合(開いた円板とか)との局所同相。大域的に座標がとれたら、その多様体自体がユークリッド空間の開集合と同相。埋込みが大域的に同相ってのは、ユークリッド空間の閉集合と同相なわけで、普通(多数派)の「座標」の定義と違う。

@m_hiyama
普通は、多様体の次元と座標成分(スカラー)の個数は同じ。

@hiroki_f
任意の擬リーマン計量って、十分次元の高いユークリッド空間からの誘導計量で導くことできるのかな?

注 @m_hiyamaさんの発言に気がついてないでなかったです。このころから、位相を気にしはじめます。それと擬リーマン計量って距離の公理を満たさない(非負性)から、擬リーマン計量から位相をつくることはできないですね。

@hiroki_f
はめ込みは同相じゃないかもしれないですけど、埋め込みは「はめ込み+像が同相」で定義されてませんでしたっけ? @oto_oto_oto 埋め込み写像は同相とは限らないよ。

@hiroki_f
もちろん相対位相をいれます。埋め込みで同相と言ったら、普通、埋め込んだ先の部分空間(平面に埋め込まれた直線)と直線が同相っていう意味ですよね。 @oto_oto_oto 相対位相を入れたら同相では?例えば、直線を平面に埋め込んだときの埋め込み写像同相写像にはならないですよね。

@oto_oto_oto
像が同相という言い回しが微妙で、像に余域から相対位相を入れたら同相では?例えば、直線を平面に埋め込んだときの埋め込み写像同相写像にはならないですよね。http://www.mm.sophia.ac.jp/~yokoyama/2000nen/mani3.pdf

@hiroki_f
これは平面と直線は同相ではないという意味ですか?それならば、そうです。 @oto_oto_oto 例えば、直線を平面に埋め込んだときの埋め込み写像同相写像にはならないですよね。

@oto_oto_oto
はい。で、例にした埋め込みで、直線に座標が入ったとは普通言わないと思うんだけど。

@hiroki_f
座標の定義ってなんですかね。僕は実数の組で位置を一意に定めることができれば、座標と呼んで良いと思っていますが、違うのでしょうか?直線上の点は(x,y)で表せます。@oto_oto_oto はい。で、例にした埋め込みで、直線に座標が入ったとは普通言わないと思うんだけど。

@hiroki_f
言わないのならは、言わないのだろう。それは慣習の問題だし。でも、座標の一義的な定義は、実数の組で位置を特定することにあるのではないだろうか?
二次元曲面を3次元ユークリッド空間に埋め込んで、曲面上の点を(x,y,h)として計算するということをやったことがあるけど、この(x,y,h)は曲面上の座標と呼んじゃいけなかったのかな。(x,y)で座標と呼ぶべきだったのか?

@oto_oto_oto
岩波数学辞典で一番一般的な座標の定義は、「集合S の各元に数量的なものを対応させてS を表す仕組」ですね。
ただ文脈を考えると、「D. 局所座標系とΓ 構造」の「E,M を位相空間とする.M の開集合U からEの開集合V 上への同相写像ϕ: U→V をE に関するM の局所座標系,U を座標近傍という.」がより適切かと。

@hiroki_f
じゃあ、僕の言っているものも座標って言ってよいのですかね?こればかりは、言葉の使い方なので世間の流儀(定義も含めて)したがうしかありません。だめなら、”座標もどき”とします。

@oto_oto_oto
一言断ればいいんじゃないでしょうか。局所座標の各成分間が独立でないのは、私には違和感があります。

@m_hiyama
スカラーの組が独立かどうか」を気にする人がいるってことでしょう。3次元空間に埋め込んだ曲面の点が(x, y, h)で特定できても、h = h(x, y) だから、(x, y)は座標でも(x, y, h)までは座標と言わないでしょ -- 普通=多数派 は。
埋め込んだ先の点を座標と呼ぶと、ちょっと収拾がつかない感じがする。1点空間 → 任意の空間 の埋込みがあるから、どんな空間のどんな点でも座標。

@hiroki_f
違和感は認めます。でも、座標と呼ばせてください。
任意の多様体を数空間に埋め込みたかったのは、微小座標変換が数空間内での閉集合(埋め込まれた多様体)の移動としてみなせることをしめそうかなと思ったけど、反発が多いしなによりも多様体を虐待(埋め込む)していることになるのでやめよう。
多様体を埋め込んではいけない。 http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~kawazumi/spcm.html

@maophilia グラスマン多様体のプリュッカー埋め込みは自然な埋め込みだと思うけどなぁ。ちなみに、さっきの話ですが、プリュッカー座標は、埋め込んだ先の射影空間の座標ですが、これをグラスマン多様体上の座標と言う気がします

@hiroki_f
埋め込んだ先の点で座標を決める例になってますね。
リーマン多様体の結果のほとんどが擬リーマン多様体である相対性理論に適用可能なのは、計量が底空間の性質ではなく、ファイバーにいれる構造であるってことに尽きるんだと思う

最初の主張は取下げました。みなさまのtwitterが考えるきっかけになり、また発言から学ばせて頂きました。ありがとうございました。