エントロピーの階層性

いや、あんんまり意見がまとまってないんだけど、気になったから書こう。

量子情報と進化の力学 / 大矢雅則, 小嶋泉編著で大矢さんの書いた部分でこんなことが書いてある。p37

物理学ほど秩序とか混沌さ、不確定さとかいう概念と長くつき合っている学問はないだろう。

ところが、物理学では複雑さがそれを測る基準系によっている把握と、その伝送という考えがなく、そこが情報力学との大きな違いである。

そうそう、これ前から気になっていたんだよね。特に複雑さがそれを測る基準系によっているってところ。

これを最初に感じたのはベネットの有名な論文を読んだとき。

KTln2 - hiroki_fの日記

この時に系のエントロピーSで、外部の系に対して有効なのは何をどの精度で測定するかに依存するなぁと思った。

外界から知ることができて、そして外界に対して有効な量ってのはエントロピーの変化の差分だし、
情報エントロピーが、
S=-\sum p_i log p_i
であることや、統計力学エントロピーが状態数Ωを用いて、
S=kT log \Omega
であることを見ると、エントロピーの値が測定の精度に依存することは明らか。

例えば、状態数Ωだけど、箱の中に分子を入れて、何処に在るかを測定することを考える。
そのときに、何処にあるかを知るためには、箱の中に仕切りを入れなくてはならない。

箱を2つに仕切れば、状態数は2だし、更に4つに仕切れば、状態数は4になる。細かく仕切れば仕切るほど状態数は増えていく。これって、測定の精度を上げていることに相当する。

そして、ベネットが情報エンジンで示したことは、
KTln2 - hiroki_fの日記
外界に対して有効なのは系についてどれだけを知っているかってことでもある。

物理学的なエントロピーSは、何か絶対的な量があるわけではなく、測定精度に依存して存在しているのであって、そういうことをもっと真剣に考えてみたら面白いじゃないのかな。

伝送に関しては、相対エントロピーって考え方をもっと物理に取り入れるべきだと思う。

こういうことを考えるにも圏論は有効なんだろうなと思う。


測定精度とエントロピーの関係はここにも書いた。
情報エントロピーと熱力学エントロピー - hiroki_fの日記
粗視化、量子消しゴム、エントロピー - hiroki_fの日記