ホッジ作用素について。

日記をずっと書いてなかった。研究室の勉強合宿があり、その帰りに伊豆を旅行してきた。川や海で従兄弟と泳いだりした。今日は雨の中、高校の同級生とバーベキューをした。

そんなことをしているうちに、量子テレポーテーションが盛り上がっている模様。
bonotakeの日記
http://www.tom.sfc.keio.ac.jp/~sakai/d/
量子テレポーテーションのお絵描き - 檜山正幸のキマイラ飼育記

こうやって分かったことをopenにしてくれることはありがたい。
kaiseih曰く、
ITの分野はopenだそうだ。

自分の考えていることをopenにしていくITの文化は良いと思う。アカデミックな分野では論文を出すことがキャリアを築く上で重要ではあり、研究のプライオリティを主張するためにブログで自分の研究をopenにすることはまずない。

自分の研究をopenにしたほうが面白い記事を書けるのだけれど、論文を出すまでは書きにくい。査読のついた論文を出すことは重要なことなのかもしれないが、インターネットで情報伝達のコストが下がっている現在、論文の出版はやや時代遅れな感じがする。ほんの小数のレフリーに気をつかったり、ページ数制限を課せられたり、また査読が通りやすいように論文の弱点を隠したり、査読が論文を歪めている感が否めない。

ペレルマンは論文を出版することなく*1フィールズ賞候補になった。

ITだけではなく、意見を積極的にopenしていく姿勢が他の分野にも広がっていけば良いと感じる。

さて、今日はホッジ作用素について、書いてみたいと思う。ホッジ作用素については、http://www12.plala.or.jp/ksp/differentialforms/MinkowskiDiffForms/がまとまっている。自分も計算するときは、このサイトの公式を参考にしている。

だって、+とか-とか符号が分からなくなるんだもん‥。

調和積分論を使った定義のほうが好きなので、そちらのほうで書いてみたい。これは後で相対性理論ゲージ理論を使って説明するための布石だ。

相対性理論はふつうはリーマン幾何学を用いて記述される。しかし、この説明の仕方があまり好きではない。内山龍雄は、ヤングやリーよりも先にゲージ理論の枠組みを考えたが、発表が遅れたためにその栄誉に預かれなかった。彼によると重力場もゲージ場の一種である。確かにそれは正しいのだが、リーマン幾何学で記述する相対性理論の本ばかりで、ゲージ理論の枠組みで相対性理論を説明している教科書はほとんどない。リーマン幾何学を我慢して読んでるうちに、いつのまにか相対性理論の説明が終わっている。これでは重力場はゲージ場であることが分からない。



重力場ゲージ理論で理解できる。


これについて、適当な時期に書いてみたい。ちなみに内山の定式化はすっきりしてない*2ので、80年代後半に整備された接続の理論を使って、説明をしたいと思う。



またまた、前置きが長くなってしまった。

さて、これからが説明。

空間が向き付け可能な多様体だとする。向き付け可能な多様体については松本幸夫 多様体の基礎を参考のこと。

向き付け可能とは、メビウスの帯みたいに空間がひねってないことだと考えればよい。つまり裏と表を決めることができる。

多様体とは、局所的にはユークリッド空間と同相だということだ。つまり、地球みたいに限られた部分については、平面で近似できる。

空間が向き付け可能な多様体であることから、局所的には座標を書くことができる。相対性理論で考えるので、座標は(t.x.y.z)の四次元だ。

向き付けを決める。向きはt x y zの順列で決める。
向きを
dt∧dx∧dy∧dz
と書く。

次に空間に計量を与える。計量とは空間の距離を決める。
例えば、空間がゴムだと思えば、ゴム上の点は伸びたり縮んだりして点と点の距離を決めることができない。

僕らが住んでる空間は、次元(t,x,y,z)→向き付け可能→計量で物質が運動する場所としての入れ物としての性質が決まっている。

特殊相対性理論ミンコフスキー空間は計量が場所に寄らない。つまり、基底を上手くとれば、diag(-1,1,1,1)で固定できる。

一般相対性理論では計量が場所によって異なる。


計量について

p\in M U,V\in T_p Mとして、計量gは、
g: T_p M \otimes T_p M \rightarrow R
で座標系が(t,x,y,z)=(x^0,x^1,x^2,x^3)で与えられた時に、
g_p=g_{\mu\nu}(p)dx^\mu\otimes dx^\nu
で与えられる。

gが擬リーマン計量の時
(1)g_p(U,V)=g_p(V,U)
(2)任意のU \in T_pMに対して、 g_p(U,V)=0なら、V=0
が成り立つ。
これらから、g_{\mu\nu}(p)は対称行列で、逆行列g^{\mu\nu}(p)をもつことが分かる。


不変体積要素について

一般にm次元向きづけ可能多様体Mに計量gが与えられると、不変体積要素を
\Omega_M=\sqrt{|g|}dx^1\wedge dx^1\wedge dx^2\wedge \cdots dx^m
と定めることができる。ここで、|g|=|\det g_{\mu\nu}|である。

これが座標系によらないことは、適当な座標変換をしてみて計算してみればわかる。多重積分を思い出して計算すればよい。

微分形式について

m次元多様体においては、r形式\Omega^r(M)\Omega^{m-r}(M)に同型である。

続きはたぶん明日。

*1:プレプリントとして公開しただけ

*2:数学のゲージ理論はヤンミルズ場の発展とともに整ってきた。