計量について。
昨日はホッジ作用素の続きを書こうと思ったが、横浜の方で雑用を3件ほど片付けていたのと、帰り道に大学に行ったら、後輩が院試で勉強していたので付き合ってしまったのと、必死に勉強している後輩を置いて、友達と飯食いに行ってしまい、そのままカラオケに行ってしまった。まぁ、勉強している暇がなかった。
免許更新をしたのだが、そのときにメガネをつけなかったので、目を凝らしてしまい、にらめつけるような写真になってしまった。ショックだった。街の中ですれ違いにざまに目つきの悪い人ににらまれることが多々あるのだが、なんか原因がわかったような気がした。ごめんなさい。メガネをかけて歩きます。
それはそうと、計量についてなんか書いてみようと思う。ホッジ作用素を計量がある空間で定義しようと思ったのだが、計量とは何かをはっきりさせなくては、書きにくい。
数学科でもなければ幾何をちゃんと勉強することはない。相対論とかをやらなければ、空間はユークリッドだ。ユークリッド空間はめちゃめちゃ単純で直感と合致し、都合の良い性質がいくつもあるため、特に勉強しなくても、不都合は感じない。しかし、物理の教科書を読むと、本当は別の概念として区別して考える必要のあることが、同じ空間で扱えるためにごっちゃまぜになって記述されている。
僕はそれが気持ちわるかった。
最初にユークリッド空間の気持ち悪さを感じたのは、小学生の時に平行線について習った時だ。
次に感じたのは、高校生でベクトルについて習った時。ベクトルの和は代数的に定義されるが、同時に平面上に書いた2つの矢印の和が平行四辺形の対角線で描けると教えられる。
これが不思議でしょうがなかった。平行四辺形の対角線がベクトルの和と同じであるというのは、平面がユークリッド空間であると仮定しているからだ。つまり、空間の性質を規定しているのだ。これを高校生の時に気がついて、幾何がおもしろいと感じるようになった。
大学生2年生の時に多様体論という分野があるのを知ったのだが、当時難しくて読めそうになかったのと、プログラムやコンピューターに興味があって、そればかり勉強していた。
時が経ち、大学四年生の時は、歪んだ平面上に流れる二次元流体の研究をしていたこともあり、曲面論を勉強していた。
修士一年は数学科に入って微分幾何を勉強していたのだけれど、修士2年からは物理科に転入した。修士二年からは相対論的完全流体について、研究した。微分形式や微分幾何をもちいて研究した。幾何学的には、非相対性理論よりも特殊相対性理論のほうが遥かに簡単で、非相対論的に定式化するほうが苦労した。
今度岩手の学会でポスター発表します。確か、領域11で23日「完全流体の力学におけるLagrange的LagrangianとEuler的Lagrangian」で発表だったような。もし良かったら、遊びにきてください。
今やっている相対論的熱力学の因果律の計算も微分形式が大活躍している。むしろ微分形式なしでは研究はできない。
幾何を知らずして、物理を研究することは、方程式を知らないで鶴亀算や植木算をやるようなもので、
単純な場合はともかく、ちょっと複雑になるといろいろ頭を使わなくてはならない。
微分形式は非常に便利だが、あまり物理のカリキュラムに含まれることもないし、本もあまりない。
岩波から「微分形式の幾何学」がでてるが、計量までは考慮されてない。
ちなみによくやる多重積分も空間は暗にユークリッドであることが仮定されている。
まぁ、計量なんて特殊なことをしない限り意識しなくてもなんとかなる。だって、場の量子論だって空間は特殊相対性理論のミンコフスキー空間だから、まぁ、ユークリッド空間みたいなものだ。
幾何を勉強しなくても、なんとかなる。これは、物理にとっては不幸なことだと思う。檜山さんがゲージ理論の用語の使い方がめちゃくちゃだと言っていたけれど、その通りで数学と物理では用語の使い方が全然違う。
僕は数学と物理のどちらの用語も使うけれど、これは帰国子女が、英語と日本語を織り交ぜて喋るようなものだ。
しかし、言葉は丁寧に意味を意識して使うべきで、意味をあいまいにして使うのは良くない。「萌え」という言葉ができて、「萌え」がなんたるかが意識されたようなものだ。ちなみに萌えって何?
いつも、前置きが長くなる。
今日は計量について。
二次元ユークリッド空間に直交座標座標(x,y)を引くと、面積Sや線の長さlは、
と決まる。
でも、座標を決めるということと面積や長さ(計量)が決まることは別概念だ。ちなみに平行線がどのように引けるかという話は、今回の話とは全く別の話(接続の理論)。
座標とは、平面の場所を表すための順序を考慮した実数のセット(x,y)なので、こんなものも座標(a,b)と言い張ることができる。
面積Sや線の長さlを、
と決めても意味がないことは明らかだ。
もう少し、まともな座標系として、曲座標(r,θ)をとって考えてみよう。
直交座標系(x,y)と同様に面積Sや線の長さlを、
と決めても意味がないことも明らかだ。
座標を決めただけでは、面積や長さが決められないことが分かる。
計量とは何か?それは長さや面積、角度を決めるものである。
どうやって、決めるのかと言うと内積を定義して決める。
ここでまた一つ厄介なことがある。内積を決める為にはベクトルを知らなくてはならないが、ベクトルは、今まで例として考えた平面Mとは別の空間(接空間TpM)で定義される。座標はあくまでもM上の場所を示すだけで、ベクトルまでは決めることができない。
http://flickr.com/photos/28114108@N07/2776962199/
から拝借
多様体は局所的にはユークリッド空間と同相なのでこういうことができる。
ベクトルとは速度vだと思えばよい。速度は空間上Mの各点できまる。
丁寧に説明すると。
ある時刻tの時にM上の点p(t)に物体Nがあるとする。
M上にある実関数fが乗っている。
そうすると、実関数f(p(t))の時間微分は、座標系をとした時に、
となる。実関数fを忘れると、速度vは
となる。任意の座標系についても、
と決めることができ、より、
となり、座標変換によらず、速度ベクトルを決めることができる。速度vはベクトルとしての性質を持っていることもわかる。つまり、TpMはアファイン空間そのものである(ユークリッド空間から位置、計量(長さなど)を抜いた空間)。
計量はTpMで定められる。
ユークリッド空間だと、空間Mもその接空間TpMも全く同じなので、距離の定義を
といいかげんに定義できる。
相対性理論の本とかだと、微小な長さとして、
とか書かれるが、これはいいかげんな書き方で、
本来は接空間に計量が定義されることをはっきりさせる必要がある。
計量についての数学的な定義は、
ホッジ作用素について。 - hiroki_fの日記
に書いた。
最後に体積要素について、これは空間M上の関数fを積分するときに考えるが、Mがm次元空間である時に、m次元の多重積分において意味を持つ。
コメント
# m-hiyama 『以前言っていた、日本人の先生が英語で出版した本の日本語訳の教科書って、なんつう本?』(2008/08/26 16:28)
# hiroki_f
>日本語訳の教科書理論物理学のための幾何学とトポロジー1、2
中原 幹夫:著 佐久間 一浩:訳
ですよ。
http://www.amazon.co.jp/dp/4894711656和訳の方が数学者のチェックが入っているので断然良いです。それでも、時々雑な記述がある(扱ってる範囲が広いので仕方がない?)ので、他の本で補って読む必要があります。』(2008/08/26 16:40)
# m-hiyama 『> 理論物理学のための幾何学とトポロジー1、2
どうもありがとう。アマゾンにはあるけど、書店では見かけないね。
> 他の本で補って読む必要があります。
ムー、他の本読みたくないなー。』(2008/08/26 17:38)
# hiroki_f 『>ムー、他の本読みたくないなー。
1巻はある程度幾何を知ってる人ならストレスなく読めると思います。ただ2巻からは読みにくいです。』(2008/08/26 20:25)